歯内療法の目的は根尖性歯周炎の予防と治療です。根尖病変が生じている既根管治療歯に対する再根管治療の成功率は、約60~70%と言われています。逆に考えると、生物学的コンセプトを遵守して、再根管治療を行なったとしても30~40%は治癒に導けない事があるという事です。
日常臨床の中で苦痛を訴えて患者さんが来院された際に、その歯が既根管治療歯であった場合、自分で解決できるのだろうかと考え、投薬によって症状緩和しない場合は抜歯を提案せざるを得ないという先生もいらっしゃるかと思います。臨床現場において既根管治療歯に根尖性歯周炎が発症している場合、術者側から提案できる選択肢は
①再根管治療を行って経過観察し、症状が改善しなければ抜歯して欠損補綴する
②投薬して症状が落ち着いたらい治療介入せずに経過観察とする
③投薬して改善しなければ、抜歯して欠損補綴を提案する
④再根管治療しても治らないだろうから、抜歯してインプラントなどの欠損補綴を提案する
⑤手に追えないと考え、大学病院に紹介する
など一般的にこれらの対応を行っている先生も多いかと思います。
しかしながら歯内療法において、通常の歯冠側からの根管治療で根尖病変を改善できない場合、病変を治癒に導く最後の手段として『外科的歯内療法』がある事を忘れてはいけません。外科的歯内療法には、歯根端切除術と意図的再植術という2つの術式をケースに合わせて選択します。もちろんこれらの術式は、簡単に習得できる治療方法でないのが現実ですが、マイクロスコープを用いた外科的歯内療法においては、約90%の成功率である事が報告されています。
本講演では再根管治療をすべきなのか、外科的歯内療法で対応すべきなのかという意思決定も含め、マイクロスコープを用いた外科的歯内療法に必要な機器や材料の選択、そして外科的歯内療法を行う上で必要となる注意事項などを、ケースも交えてstep-by-stepで解説していきたいと思います。
下山智義 (しもやま歯科医院)